【この記事の結論】
・SES採用成功にはペルソナを明確にし、給与や還元率を具体的な数値で開示することが重要です。
・案件選択制度や単価連動型給与など、エンジニアがメリットを感じる独自の制度を明示します。
・求人票には使用言語や開発環境などの案件情報を詳細に記載し、具体的な業務イメージを伝えます。
・選考結果は1週間以内に伝え、内定通知では入社後の年収推移も提示して承諾率を高めます。
・未経験者には研修期間やメンター制度などの教育体制を具体的に示し、入社への不安を払拭します。
SES(システムエンジニアリングサービス)業界において、エンジニア採用の難易度は年々高まっています。
「求人を出しても応募が集まらない」「応募があっても求めるスキルを持つ人材がいない」といった悩みを抱える採用担当者は多いのではないでしょうか。
経済産業省の調査によると、2030年には最大約79万人のIT人材が不足すると予測されており、SES業界の採用難は今後さらに加速していく見込みです。
本記事では、SESエンジニア採用が難しい理由を紐解きながら、採用を成功に導くためのポイント、求人票の書き方、内定承諾率を高める面接・フォローのコツまでをわかりやすく解説します。
目次
1.SES企業のエンジニア採用が難しい理由
この章では、SES企業がエンジニア採用に苦戦する5つの背景について解説します。業界構造やイメージの問題を把握することで、効果的な対策を立てる土台を築けます。
IT業界全体で人材が不足している
IT人材の供給は需要に追いついておらず、採用市場は完全な売り手市場となっています。
経済産業省の「IT人材需給に関する調査」によると、2030年には最大約79万人のIT人材が不足すると予測されており、DX推進やAI活用の加速によってあらゆる産業で需要が急増する一方、技術者の育成は追いついていません。
特にクラウド・セキュリティ・AI領域では深刻な人手不足が続いており、企業間の人材獲得競争は年々激化しています。
厚生労働省の統計では、2025年11月時点の「情報処理・通信技術者」の有効求人倍率は1.43倍と、全職種平均の1.12倍を大きく上回る水準です。SES企業は自社開発企業や事業会社とも人材を奪い合う状況にあり、エンジニア採用の難易度は高まり続けています。
他社との差別化が難しい
SES企業はクライアント先へエンジニアを派遣し、システムの開発・運用・保守を担うという点で共通しているため、サービス内容が類似しやすく、求職者から見ると「どこも同じ」に映りがちです。
還元率や取扱案件といった基本条件だけでは他社との明確な違いを打ち出しにくく、求職者が企業を比較検討する際の決め手に欠けてしまいます。自社の独自性を言語化できていない場合、より好条件を提示する企業に人材が流れるのは避けられません。
そのため、制度設計や社風、キャリア支援の充実度など、条件面以外の魅力を明確に伝える工夫が求められます。
自社開発企業との採用競争が激しい
SES企業は自社開発企業や受託開発企業と同じ土俵でエンジニアを取り合うことになります。求職者の中には「自社プロダクトに長く携われる」「上流工程から関われる」といった点に魅力を感じ、SES企業よりも自社開発企業を志望する層が一定数存在します。
SESでは案件ごとに業務内容や環境が変わるため、「腰を据えて一つのサービスを育てたい」と考えるエンジニアにとっては選択肢から外れてしまうこともあります。
一方で、SESならではの強みである多様な現場経験を積める点や幅広い技術に触れられる点を正しく伝えられていない企業も少なくありません。
競合と比較されることを前提に、SES企業だからこそ得られる価値を明確に発信することが、エンジニア採用を成功させるコツとなります。
SES業界はブラックイメージがある
一部の悪質な企業の影響により、SES業界全体に「ブラック」というイメージが定着しています。
「給与が上がりにくい」「案件がなければ待機になる」「多重派遣でキャリアが見えにくい」といったネガティブな情報がSNSや口コミサイトで拡散され、SES業界自体を敬遠する求職者も少なくありません。
実際には還元率が高く働きやすい環境を整えているSES企業も多く存在しますが、業界全体のイメージを個社の努力だけで覆すのは容易ではありません。採用活動では、自社の透明性や信頼性を具体的な数値や制度で示し、求職者の不安を払拭していく姿勢が求められます。
入社後のギャップで早期離職が多い
入社前の期待と入社後の現実にギャップが生じると、早期離職を招きやすくなります。SESでは配属先によって業務内容や職場環境が大きく異なるため、「想像していた仕事と違った」と感じる新入社員が出やすい傾向にあります。
たとえば、自由な働き方をイメージして入社したものの、実際にはスキル習得のための自己研鑽が欠かせず、想像以上にハードだったというケースも見られます。
こうしたミスマッチを防ぐには、採用段階でリアルな業務内容やキャリアパスを伝え、求職者との認識をすり合わせておくことが不可欠です。
2.SES企業の採用を成功させるポイント
この章では、SESエンジニアの採用成功に欠かせない5つの施策を紹介します。ペルソナ設計から媒体選定まで、実践的なノウハウを押さえましょう。
ペルソナ設計でターゲットを明確にする
採用活動の第一歩は、自社が求める人材像を具体的に定義する「ペルソナ設計」です。
単に「エンジニア経験3年以上」といったスキル要件を並べるだけでは、どのような人物を採用したいのかが曖昧になり、求人広告の訴求がぼやけてしまいます。
ペルソナ設計では、年齢・経験年数・志向性・転職理由・現職での不満といった要素を具体化し、ターゲット像を明確にします。
項目 |
内容例 |
|---|---|
年齢・経験年数 |
28歳・Java開発経験4年 |
志向性 |
技術を追求したい/マネジメントに興味あり |
転職理由 |
年収アップ/スキルアップ/働き方の改善 |
現職での不満 |
評価制度が不透明/案件を選べない |
希望する働き方 |
リモートワーク併用/残業少なめ |
ペルソナを明確にすることで、求人広告の内容や面接での訴求ポイントが定まり、ターゲット層に響くメッセージを発信できるようになります。
給与体系・還元率を積極的に開示する
エンジニアは転職時に給与や還元率を重視する傾向が強いため、条件を明確に開示することが応募獲得のコツです。「経験・スキルを考慮のうえ優遇」といった曖昧な表現は避け、具体的な金額や還元率を示すことで求職者の信頼を得やすくなります。
また、競合他社の給与水準をリサーチし、市場相場と比較して自社の条件が魅力的かどうかを確認することも重要です。
NG例 |
Good例 |
|---|---|
月給30万円〜(経験考慮) |
・月給30万〜70万円/還元率75%
|
給与の上限や平均年収、年収アップの実績を数値で示すと、求職者が入社後の待遇をイメージしやすくなり、応募意欲の向上につながっていきます。
案件選択制度など独自の強みを打ち出す
他社との差別化を図るには、自社ならではの制度や特徴を明確に打ち出すことが不可欠です。
求職者は「この会社でなければ得られない価値」を求めており、案件選択制度、単価連動型の給与体系、エンジニアのキャリアを考慮したアサイン方針、充実した研修制度などは強力なアピールポイントになります。
案件選択制度:エンジニア自身が携わる案件を選べる仕組み
単価連動型給与:案件単価に応じて給与が上がる透明性の高い報酬体系
キャリア支援制度:資格取得支援、勉強会開催、キャリア面談の実施
帰属意識を高める施策:社内交流イベント、オンラインコミュニティの運営
これらの強みを求人広告や面接で具体的に伝えることで、「この会社で働きたい」と思わせる動機づけができます。
求人媒体・スカウトを使い分ける
ターゲットとする人材の属性や経験年数に応じて、利用する求人媒体を使い分けることが効果的です。
すべての媒体で同じ原稿を掲載するのではなく、各媒体の特性を理解し、適切なアプローチを選択する必要があります。
経験年数 |
推奨媒体 |
特徴 |
|---|---|---|
1〜3年 |
Indeed、Wantedly |
若手層が多く利用 |
3年以上 |
type、doda、Green |
経験者層にリーチしやすい |
即戦力 |
ビズリーチ、スカウト |
ハイクラス人材へ直接アプローチ |
待ちの姿勢だけでなく、スカウトメールを活用した攻めの採用も有効です。求職者一人ひとりの経歴を確認し、パーソナライズされたメッセージを送ることで返信率を高められます。
リファラル採用も検討する
既存社員からの紹介による「リファラル採用」は、採用コストを抑えつつカルチャーフィットした人材を獲得できる手法です。紹介者が自社の雰囲気や仕事内容を直接伝えるため、入社後のミスマッチが起きにくく、定着率も高い傾向にあります。
リファラル採用を活性化させるには、紹介インセンティブの設計や紹介しやすい仕組みづくりが重要です。社員が「この会社を友人にも勧めたい」と思える職場環境を整えることが、リファラル採用成功の前提条件となります。
3.SES企業の求人票の書き方
この章では、SESエンジニア採用における求人票作成のコツを解説します。案件情報の記載から経験者・未経験者別の訴求まで、実践的なポイントを押さえましょう。
案件情報・業務内容を詳細に記載する
求職者は「自分のスキルが活かせるか」を判断するため、案件情報の詳細を重視しています。「システム開発」といった漠然とした記載では、エンジニアに自分ごととして捉えてもらえません。
使用言語、開発環境、担当フェーズ、チーム体制、案件の業界など、できる限り具体的な情報を盛り込む必要があります。
開発言語:Java、Python、PHP、JavaScript など
開発環境:AWS、Azure、Docker、Git など
担当フェーズ:要件定義、基本設計、詳細設計、実装、テスト
チーム体制:5〜10名規模、リーダー1名+メンバー4名
案件業界:金融、EC、製造、官公庁 など
複数の案件例を掲載し、自社で携われる仕事の幅広さを示すことも有効です。「この会社なら自分の経験が活かせそう」と感じてもらえる具体性が大切です。
経験者向けに高単価・商流の浅さをアピールする
経験者を採用する場合、年収アップへの期待に応える訴求が効果的です。
案件単価や還元率、エンド直・プライム案件の比率、商流の浅さといった情報は、経験者が特に重視するポイントです。
案件単価:60万〜90万円の案件が中心
還元率:75〜80%(業界平均を上回る水準)
商流:エンド直案件50%以上/二次請けまでがメイン
年収実績:入社1年で年収100万円アップの実績あり
経験者は市場価値を理解しているため、抽象的な表現ではなく数値で裏付けられた情報を提示することで信頼を獲得できます。
「上流工程から携われる」「顧客折衝の機会がある」といったキャリアアップを後押しする要素も、有効な訴求ポイントです。
未経験者向けに教育・研修制度をアピールする
未経験者や経験の浅い層をターゲットにする場合は、教育体制の充実度を前面に打ち出すことが重要です。
「未経験でも安心」と伝えるだけでは具体性に欠けるため、研修内容や期間、サポート体制を明示する必要があります。
研修期間:入社後1〜3カ月間の研修を実施
研修内容:ビジネスマナー、プログラミング基礎、実践演習
メンター制度:先輩社員が1対1でサポート
資格取得支援:受験費用全額負担、合格祝い金あり
未経験者は「ちゃんと育ててもらえるのか」という不安を抱えています。入社後のフォロー体制やキャリアパスを具体的に示すことで安心感を与え、応募へのハードルを下げられます。
スカウト文面に具体的な案件例を記載する
スカウトメールは、テンプレート的な文面では他社のメールに埋もれてしまいます。求職者の経歴を踏まえ、「あなたの経験が活かせる案件がある」と伝えることが重要です。
求職者の経験言語に合わせた案件例を提示
「〇〇様のJava開発経験を活かせる金融系プロジェクト」など具体的に記載
なぜ声をかけたのか、理由を明記する
還元率や働き方など、求職者が気になる情報を盛り込む
パーソナライズされたスカウトは、求職者に「自分のことを見てくれている」という印象を与え、返信率の向上に直結します。送信数を追うのではなく、一通一通の質を高めることが成果への近道です。
4.内定承諾率を上げる面接・フォローのコツ
この章では、面接での志望度向上から内定辞退を防ぐフォローまでを解説します。選考プロセス全体を通じた丁寧な対応が、採用成功の決め手になります。
カジュアル面談を活用する
カジュアル面談は、正式な選考の前に求職者と接点を持ち、相互理解を深める場として有効です。選考という堅い雰囲気ではなくフランクに会話できるため、求職者の本音や志向性をつかみやすくなります。
企業側もリラックスした状態で自社の魅力や働き方を伝えられるため、入社後のミスマッチ防止に役立ちます。「まずは気軽に話を聞いてみたい」という層を取り込めるため、応募の母集団を広げる効果も期待できます。
オンライン開催にすると、求職者の参加ハードルも下がります。
面接官の印象で志望度が変わる
面接官の対応は、求職者の志望度に大きく影響します。高圧的な態度や準備不足が見える面接は、「この会社は社員を大切にしていない」という印象を与えかねません。
調査によると、転職者が入社を決めた理由として「面接官が好印象だった」が上位に挙がるケースは多く、逆に面接官の印象が悪くて辞退したという声も少なくありません。面接官は「会社の顔」として身だしなみや話し方、傾聴の姿勢に気を配る必要があります。
「面接はお互いを知る場」というスタンスで臨み、求職者の話を丁寧に聞くことで信頼関係を築けます。
選考スピードを上げる
選考に時間がかかりすぎると、他社に先を越されて辞退されるリスクが高まります。エンジニア採用市場は競争が激しく、優秀な人材ほど複数社から内定を得ているため、スピードで後れを取ると候補者を逃してしまいます。
書類選考から面接設定、内定通知までのリードタイムを短縮し、迅速な選考フローを構築することが重要です。特に経験者採用では、1週間以内に結果を伝えることを目標にしましょう。
選考プロセスを見直し、面接回数の削減やオンライン面接の導入など、スピードアップできる箇所を洗い出すことをおすすめします。
内定通知で年収の上がり幅を提示する
内定通知は、単に条件を羅列するだけでなく、求職者の期待に応える情報を盛り込むことが大切です。年収は基本給だけでなく、手当や賞与を含めた想定年収、さらには入社後の昇給イメージまで示すと効果的です。
「現職より年収が上がる」ことを具体的な数値で示すことで、入社への意欲を高められます。他社と比較検討されている場合でも、中長期的な年収の上がり幅を伝えることで「長く働けば報われる会社」という印象を与え、目先の条件だけでない判断を促せます。
内定者フォローで辞退を防ぐ
内定から入社までの期間が空く場合、定期的なフォローを怠ると内定辞退を招きかねません。内定者は入社を決めたあとも不安を感じていることが多く、「本当にこの会社でよかったのか」と迷うこともあります。
定期的な連絡に加え、現場社員との懇親会や食事会、オフィス見学などの機会を設けることで、入社へのモチベーションを維持できます。
「あなたの入社を心待ちにしている」という姿勢を伝え、帰属意識を早期に醸成していくことが、辞退防止と入社後の定着に効果的です。
5.SESエンジニア採用に関するよくある質問
この章では、SESエンジニア採用でよく寄せられる疑問にQ&A形式でお答えします。採用活動の改善に向けたヒントとしてご活用ください。
SES業界での採用が難しい理由は?
SES業界の採用が難しい理由は、IT業界全体の人材不足に加え、業界特有の課題が重なっているためです。経済産業省の調査では2030年に最大約79万人のIT人材が不足すると予測されており、SES企業だけでなくIT業界全体が採用難に直面しています。
さらにSES業界は他社との差別化が難しく、「ブラック」というイメージを持たれやすい側面もあります。自社開発企業との採用競争も激しく、SESならではの価値を正しく伝えられていないと、優秀な人材の獲得は困難です。
内定承諾率を上げるには?
内定承諾率を上げるには、選考プロセス全体を通じた丁寧なコミュニケーションと迅速な対応が重要です。面接では求職者の志向性を理解し、それに合わせた動機づけを行う必要があります。
内定通知時には年収の上がり幅や入社後のキャリアパスを具体的に示すことで、他社との差別化を図れます。内定から入社までの期間に定期的なフォローを行い、求職者の不安を解消することも欠かせません。
面接官の印象や選考スピードも承諾率に影響するため、選考フロー全体の見直しが効果的です。
短期離職を防ぐには?
短期離職を防ぐには、採用段階でのミスマッチを減らすことが最も効果的です。求人票には案件情報や業務内容を詳細に記載し、面接では入社後の働き方やキャリアパスをリアルに伝える必要があります。
「聞いていた話と違った」というギャップが離職の大きな原因となるため、良い面だけでなく課題や大変な点も正直に伝えることが信頼獲得のポイントです。
入社後は定期的な面談やメンター制度を通じてフォローを行い、悩みを早期にキャッチアップできる体制を整えてください。帰属意識を高める社内施策も定着率向上に寄与します。
採用コストを下げるには?
採用コストを下げるには、人材紹介への依存度を下げ、自社での採用力を高めることが有効です。求人媒体の選定を見直し、ターゲットに合った媒体を活用する必要があります。
フリーランスボード
など案件単位で求人を増やせる媒体を使うと、掲載効率を高められます。リファラル採用を活性化させることで、紹介インセンティブのみで採用できるケースも増えていきます。
採用ブランディングに取り組み、自社への応募を自然に集められる状態を目指すことが、長期的なコスト削減に効果的です。
6.まとめ
本記事では、SESエンジニア採用が難しい理由から、採用を成功させるためのポイント、求人票の書き方、内定承諾率を上げる面接・フォローのコツまで幅広く解説してきました。
SESエンジニアの採用難易度は年々高まっていますが、正しいアプローチを取ることで成果を出すことは十分に可能です。重要なのは、採用がうまくいかない原因を「市場環境のせい」で終わらせず、自社の採用プロセスを一つひとつ見直すことです。
まずはペルソナ設計や求人票の改善など、本記事で紹介した施策の中から取り組みやすいものを一つ選び、着手することから始めてみてください。
IT人材の不足は今後も続くと予測されており、優秀なエンジニアの獲得競争はますます激化していきます。採用力の強化に早期から取り組むことで、競合他社に先んじて人材を確保できる体制を築いていきましょう。
本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。