SES契約書の記載項目と作成のポイント|準委任契約との関係や指揮命令系統・印紙の扱いまで解説
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SES契約書の記載項目と作成のポイント|準委任契約との関係や指揮命令系統・印紙の扱いまで解説

公開日:2026/03/31最終更新日:2026/03/31
【この記事の結論】
  • SES契約は技術を提供する準委任契約で、完成義務ではなく業務の遂行そのものに対して報酬が発生します。。
  • 指揮命令権は常に受託企業にあり、客先から直接指示を受けると違法な偽装請負とみなされるリスクがあります。。
  • 請負契約と異なり成果物責任を負いませんが、受託者は誠実に業務を遂行する善管注意義務を負っています。。
  • SES契約書は原則として収入印紙が不要ですが、請負的性質や知的財産権の譲渡を含む場合は課税されます。。
  • 偽装請負を防ぐには、現場に責任者を配置し、顧客の指示が必ず責任者を経由するような体制を徹底します。。


SES(システムエンジニアリングサービス)契約は、IT業界で広く活用される契約形態です。


「準委任契約との関係がよく分からない」「派遣契約や請負契約との違いが曖昧」「収入印紙は必要なのか判断できない」といった疑問を抱えながら、SES契約書の作成に不安を感じている方は多いのではないでしょうか。


しかし、SES契約の法的性質を正しく理解しないまま契約書を作成すると、偽装請負と判断されるリスクや、印紙税の過怠税を課されるリスクがあります。


本記事では、SES契約書の基本的な定義から記載すべき項目、派遣・請負との違い、収入印紙の取り扱い、偽装請負を防ぐポイントまで、実務で押さえるべき内容をわかりやすく解説します。

1.SES契約書とは?準委任契約との関係

この章では、SES契約の基本的な定義と、民法上の準委任契約との関係性について解説します。SES契約がなぜ準委任契約に分類されるのか、また準委任契約の2つの類型についても詳しく見ていきます。

SES(システムエンジニアリングサービス)契約の定義

SES契約とは、エンジニアの技術力や労働力を一定期間クライアントに提供し、その稼働時間に応じて報酬を受け取る契約形態です。


SESは「System Engineering Service(システムエンジニアリングサービス)」の略称であり、IT業界で広く活用されています。具体的には、SES企業がクライアント企業のプロジェクトにエンジニアを常駐させ、システム開発や保守・運用などの技術支援を行います。

SES契約書の特徴は、成果物の完成ではなく業務の遂行そのものに対して報酬が発生する点にあります。そのため、プロジェクトの途中で成果物が完成しなくても、契約で定めた業務を適切に遂行していれば報酬が支払われます。

この性質から、SES契約は法的には民法上の準委任契約に分類されています。

SES契約が準委任契約に該当する理由

SES契約が準委任契約に該当する理由は、「法律行為以外の事務の委託」という民法上の定義に合致するためです。


民法では、契約形態は大きく「請負契約」と「委任・準委任契約」に分類されており、請負契約は仕事の完成を目的として成果物に対して報酬が支払われる形態です。


一方、委任契約は弁護士への訴訟委任のように法律行為の委託を指し、準委任契約は法律行為以外の事務の委託を指します。SES契約では、エンジニアがシステム開発や保守運用などの「事務」を遂行することが目的であり、これは法律行為には該当しません。


さらに、SES契約書では成果物の完成義務を負わず、業務を誠実に遂行する「善管注意義務」のみを負う点が請負契約との大きな違いです。これらの特性から、SES契約は民法第656条が定める準委任契約の要件を満たしています。

準委任契約の2分類(履行割合型・成果完成型)

準委任契約には「履行割合型」と「成果完成型」の2つの類型があり、SES契約は一般的に履行割合型に分類されます。2020年4月施行の改正民法により、準委任契約は報酬の支払い方法に応じてこの2類型に区分されるようになりました。

履行割合型は業務の履行の割合に応じて報酬が支払われる形態であり、SES契約書において「月160時間稼働で◯◯万円」といった時間単価制の報酬体系を採用している場合はこちらに該当します。


一方、成果完成型は委任事務の成果に対して報酬が支払われる形態で、仕事の完成義務は負いませんが、成果物の引渡しと報酬支払いが対価関係にある点が特徴です。


SES契約書を作成する際は、自社の契約がどちらの類型に当てはまるかを明確にしたうえで、報酬の支払い条件を適切に規定する必要があります。

2.SES契約と派遣契約・請負契約の違い

この章では、SES契約と派遣契約・請負契約の違いについて、指揮命令権や報酬発生条件などの観点から詳しく比較します。これらの違いを正確に理解することは、偽装請負リスクを回避するために不可欠です。

SES契約と派遣契約の違い

SES契約と派遣契約の最大の違いは「指揮命令権の所在」にあります。


派遣契約では、派遣先企業(クライアント)が派遣されたエンジニアに対して直接指揮命令を行う権限を持ち、出退勤の管理や具体的な業務指示もすべて派遣先企業が行います。

一方、SES契約では指揮命令権は受託企業(SES企業)側にあり、エンジニアがクライアント企業に常駐していても、業務の指示はSES企業の管理者を通じて行わなければなりません。クライアント企業がSESエンジニアに直接指示を出すと、「偽装請負」と判断されるリスクがあります。


また、派遣契約を締結するには派遣元企業が労働者派遣事業の許可を取得している必要がありますが、SES契約書にはこうした許認可は不要です。ただし、その分だけ指揮命令系統の運用には細心の注意が求められます。

SES契約と請負契約の違い

SES契約と請負契約の根本的な違いは「何に対して報酬が支払われるか」という点です。請負契約は民法第632条に規定されており、「仕事の完成」に対して報酬が支払われる形態で、受注者は成果物を完成させて納品する義務を負います。

成果物に瑕疵(不具合)があった場合は契約不適合責任を負い、納期遅延が発生した場合も受注者側の責任となります。一方、SES契約(準委任契約)は「業務の遂行」に対して報酬が支払われるため、成果物の完成義務はなく、契約で定めた業務を誠実に遂行していれば報酬を受け取る権利があります。


なお、請負契約では指揮命令権は受注者側にありますが、成果物の仕様や納期はクライアント側が決定する点も特徴です。SES契約書を作成する際は、請負契約との混同を避けるため、報酬の発生条件を明確に記載する必要があります。

【比較表】SES・派遣・請負の違いまとめ

SES契約・派遣契約・請負契約の違いを正確に理解するには、主要な項目ごとに比較することが効果的です。


以下の表で、3つの契約形態の特徴を整理します。

比較項目

SES契約

(準委任契約)

派遣契約

請負契約

法的分類

準委任契約

(民法656条)

労働者派遣契約

(労働者派遣法)

請負契約

(民法632条)

報酬の対象

業務の遂行

(稼働時間)

労働力の提供

(稼働時間)

成果物の完成・納品

指揮命令権

受託企業

(SES企業)

派遣先企業

(クライアント)

受注企業

(請負側が管理)

成果物責任

なし

(善管注意義務のみ)

なし

あり

(契約不適合責任)

必要な許認可

不要

労働者派遣事業許可が必要

不要

収入印紙

原則不要

原則不要

契約金額に応じて必要

※SES契約は準委任として整理されることが多いですが、業務内容により委任・請負に当たる場合もあります。

※収入印紙の要否は契約書の名称ではなく記載内容で判断されます。SES契約書でも「請負」に当たる内容が含まれる場合は課税対象となり得ます。


この比較表からわかるとおり、SES契約は指揮命令権がSES企業側にある点が派遣契約との決定的な違いであり、成果物責任を負わない点が請負契約との違いです。


契約書作成時には、自社の取引実態がどの契約形態に該当するかを正確に判断し、適切な条項を設けることが不可欠です。

3.SES契約書の種類(基本契約書・個別契約書)

この章では、SES契約で用いられる「基本契約書」と「個別契約書」の役割と内容を解説します。継続的な取引を効率化するために、両者を使い分ける方法を理解しておきましょう。

基本契約書とは

基本契約書とは、継続的な取引を前提に、取引全体に共通する基本ルールを定めた契約書であり、SES契約では「SES基本契約書」や「業務委託基本契約書」といった名称で締結されます。


規定される主な内容は以下のとおりです。

  • 契約の目的と基本的な取引条件

  • 指揮命令系統と業務責任者の設置

  • 秘密保持義務(NDA条項)

  • 知的財産権の帰属

  • 損害賠償の範囲と上限

  • 契約解除事由と手続き

  • 反社会的勢力の排除条項

基本契約書は個別の案件ごとに変わらない共通事項を規定するものであり、一度締結すると複数のプロジェクトに適用できるため、案件のたびに詳細な契約交渉を行う手間を省けます。


ただし、基本契約書だけでは業務内容や報酬額といった具体的な条件が定まらないため、個別契約書と組み合わせて使用するのが一般的です。

個別契約書(注文書・注文請書)とは

個別契約書とは、基本契約書の枠組みのもとで、個々の案件ごとの具体的な条件を定めた契約書です。「注文書」と「注文請書」のセットで締結されることが多く、実務では「個別契約」や「発注書・受注書」とも呼ばれます。

規定される主な内容は以下のとおりです。

  • 業務内容・業務範囲の詳細

  • 従事するエンジニアの人数・スキル要件

  • 契約期間(開始日・終了日)

  • 報酬金額と支払い条件

  • 月間稼働時間の基準(精算幅の上下限)

  • 作業場所(常駐先・リモートワークの可否)

基本契約書が「枠組み」を定め、個別契約書が「具体的な中身」を定めるという役割分担になっており、両者の内容に矛盾が生じた場合の優先順位も基本契約書で明記しておくことが望ましく、一般的には個別契約書が優先されます。


なお、下請法やフリーランス保護法(フリーランス・事業者間取引適正化法)の対象取引に該当する場合は、所定の記載事項を満たす書面を交付する義務が生じる点にも注意が必要です。

4.SES契約書に盛り込むべき記載項目と作成ポイント

この章では、SES契約書を作成する際に必ず盛り込むべき記載項目と、それぞれの作成ポイントを解説します。

トラブルを未然に防ぐために、各項目の意義と注意点を押さえておきましょう。

業務内容・業務範囲

SES契約書において、業務内容と業務範囲の明確な規定は最も重要な項目の一つです。


業務範囲が曖昧なまま契約を締結すると、クライアントから契約外の業務を要求されたり、責任の所在が不明確になったりするリスクがあります。

具体的には、「システム開発支援」「インフラ構築・運用支援」「テスト業務」など、エンジニアが従事する業務の種類を明記し、使用する技術やツール、担当工程も可能な限り具体的に記載することが望ましいです。


また、「本契約で定める業務以外の業務を委託する場合は、別途協議のうえ個別契約を締結する」といった条項を設けることで、範囲外の業務要求を防止できます。

報酬・精算幅(稼働時間の上下限)

SES契約書では、報酬の算定方法と精算幅(稼働時間の上下限)を明確に定める必要があります。SES契約は稼働時間に応じて報酬が支払われる形態が一般的ですが、その基準が不明確だと報酬トラブルの原因となります。

報酬の規定例としては「月額報酬◯◯万円(月間稼働時間140時間~180時間を基準とする)」といった形式が用いられ、この範囲内であれば報酬は一定です。


基準時間を下回った場合は「1時間あたり◯◯円を減額する」、上回った場合は「1時間あたり◯◯円を加算する」といった精算条項を設けます。支払期日についても「月末締め翌月末払い」など具体的に明記する必要があります。

契約期間・更新・中途解約

契約期間の定めと、更新・中途解約のルールはSES契約書において欠かせない項目です。


契約期間については開始日と終了日を明記し、継続的な取引を想定する場合は「期間満了の1か月前までに双方から異議がない場合は同一条件で更新する」といった自動更新条項を設けるのが一般的です。


中途解約については、やむを得ない事由が生じた場合の解約手続きとして「◯か月前までに書面により通知することで解約できる」といった予告期間を設定し、急な契約終了によるリスクを軽減します。

また、契約違反や反社会的勢力との関係が判明した場合など、即時解除が可能な事由もSES契約書に明記しておくことが重要です。

指揮命令系統と業務責任者

SES契約書では、指揮命令系統と業務責任者の設置を明確に規定することが偽装請負を防ぐために不可欠です。SES契約では指揮命令権はSES企業側にあり、クライアント企業がエンジニアに直接業務指示を行うと偽装請負と判断されるリスクがあります。

この点を契約書で明確にするため、以下の内容を規定します。

  • 受託企業側に「業務責任者」を設置し、その氏名と連絡先を明記する

  • 業務に関する指示・連絡は、業務責任者を通じて行う旨を規定する

  • クライアント側にも「連絡担当者」を設置し、窓口を一本化する

これにより指揮命令系統が明確になり、偽装請負リスクを低減できます。SES契約書だけでなく、実際の運用においても指揮命令系統を遵守することが重要です。

著作権・知的財産権の帰属

SES業務の過程で発生する著作権や知的財産権の帰属は、契約書で明確に定めておくべき重要事項です。


SES契約は準委任契約であり成果物の納品を目的としていませんが、業務遂行の過程でプログラムやドキュメントが作成されることがあり、著作権の帰属先を明確にしないと後にトラブルとなる可能性があります。


一般的な規定方法としては以下のパターンがあります。

  • クライアントへの帰属:

    「本業務により生じた成果物の著作権(著作権法第27条および第28条の権利を含む)は、対価の支払いをもってクライアントに移転する」

  • 受託企業への留保:

    「既存の著作物およびノウハウについては、受託企業に留保される」

著作者人格権の不行使特約を設けるかどうかも、SES契約書における交渉のポイントとなります。

秘密保持(NDA)・反社条項

秘密保持条項と反社会的勢力の排除条項は、SES契約書における標準的な記載項目です。


SES業務ではエンジニアがクライアントの機密情報(システム仕様、顧客データ、経営情報など)に触れる機会が多いため、秘密情報の定義、秘密保持義務の内容、義務の存続期間(契約終了後も一定期間継続)などを規定します。


また、情報漏洩が発生した場合の対応(報告義務、是正措置、損害賠償)についても定めておくことが重要です。


反社会的勢力の排除条項(反社条項)は、契約当事者が暴力団等の反社会的勢力でないこと、および将来にわたって関係を持たないことを相互に表明・保証するものであり、違反した場合は無催告で契約を解除できる旨を規定するのが一般的です。

損害賠償・協議条項・禁止事項

損害賠償条項、協議条項、禁止事項は、契約上のリスクを管理するために重要な項目です。


損害賠償条項では契約違反や不法行為により損害が発生した場合の責任範囲を定め、「損害賠償額の上限は直近◯か月間の報酬総額を限度とする」といった上限規定を設けることで過大なリスクを回避できます。


ただし、故意・重過失による場合や秘密保持義務違反の場合は上限を適用しない例外規定も検討すべきです。
協議条項は「本契約に定めのない事項または解釈に疑義が生じた場合は、双方誠意をもって協議し解決する」という標準的な規定となります。


禁止事項としては以下の内容を規定することが一般的です。

  • 再委託の禁止(または事前承諾を要する旨)

  • 競業避止義務

  • エンジニアの引き抜き禁止(契約期間中および契約終了後の一定期間)

5.SES契約書に収入印紙は必要?

この章では、SES契約書における収入印紙の要否について解説します。

原則として不要ですが、契約内容によっては印紙が必要となるケースもあるため、正確に理解しておきましょう。

原則として印紙は不要

SES契約書には、原則として収入印紙を貼付する必要はありません。


印紙税法では課税文書(契約書や領収書など)に対して印紙税が課されますが、準委任契約書は課税文書の対象外とされており、SES契約は法的に準委任契約に該当するため「不課税文書」として扱われます。


印紙税法における課税文書は第1号文書から第20号文書まで記載されていますが、準委任契約書はこのいずれにも該当しません。そのため、純粋なSES契約(準委任契約)であれば契約金額にかかわらず収入印紙は不要です。


一方、請負契約書は印紙税法上の第2号文書に該当し、契約金額に応じて200円から60万円の印紙税が課される点が、SES契約書との実務上の大きな違いとなっています。

印紙が必要になるケース

SES契約書であっても、契約内容によっては収入印紙が必要となるケースがあり、以下のいずれかに該当する場合は注意が必要です。

  • 請負的な性質を含む場合(第2号文書):

    SES契約書の中に成果物の完成・納品を条件とする条項が含まれていると、請負契約としての性質を帯び、第2号文書(請負に関する契約書)に該当する可能性があります。

  • 継続的取引の基本契約の場合(第7号文書):

    請負的な要素を含むSES基本契約書で、契約期間が3か月を超え、かつ更新条項がある場合は、第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)に該当し、一律4,000円の印紙税が課されます。

  • 知的財産権の譲渡を含む場合(第1号文書):

    SES契約書の中に著作権や特許権などの無体財産権の譲渡に関する条項が含まれていると、第1号文書に該当する可能性があります。

契約書のタイトルが「SES契約書」であっても、内容が請負的な性質を持っていれば課税文書と判断されます。印紙税は契約書の「実質的な内容」によって判定されるため、タイトルだけで判断してはなりません。

貼らなかった場合の過怠税

課税文書に該当する契約書に印紙を貼付しなかった場合、過怠税が課されます。印紙税法では、課税文書に印紙を貼付しなかった場合、本来納付すべき印紙税額とその2倍に相当する金額の合計額(税額の3倍)が過怠税として徴収されると定められています(印紙税法第20条 )。

たとえば、本来1万円の印紙が必要だった契約書に印紙を貼付していなかった場合、3万円の過怠税を納付しなければなりません。ただし、自主的に申し出た場合は過怠税が本来の印紙税額の1.1倍に軽減され、印紙に消印(割印)をしなかった場合も消印されていない印紙の額面と同額の過怠税が課されます。


SES契約書を作成する際は契約内容を精査し、課税文書に該当するかどうかを慎重に判断することが重要であり、判断に迷う場合は税理士や行政書士などの専門家への相談をお勧めします。

6.偽装請負とは?SES契約で注意すべきポイント

この章では、SES契約において最も注意すべき「偽装請負」の問題について解説します。

偽装請負と判断される基準や、リスクを回避するための具体的なポイントを押さえておきましょう。

偽装請負となる基準を理解する

偽装請負とは、形式上は業務委託契約(SES契約や請負契約)でありながら、実態は労働者派遣に該当する違法な状態を指します。


厚生労働省の「37号告示」では、受託企業が自社労働者に対する業務指示や管理を自ら行う「労務管理の独立性」と、事業主としての責任を負う「業務遂行の独立性」が求められています。


クライアント企業がSESエンジニアに直接業務指示を行ったり勤怠管理を行ったりしている場合は、偽装請負と判断されるリスクが高まります。

契約内容と実態の乖離を防ぐ

偽装請負を防ぐには、SES契約書の内容と実際の業務運用を一致させることが不可欠であり、契約書上は適切にSES契約として規定していても現場運用が派遣的であれば偽装請負と判断されます。


クライアント企業がエンジニアに直接業務指示を行ったり、出退勤時間や休暇を管理したりしている場合は改善が必要です。SES企業側に業務責任者を配置し、すべての指示をその責任者を通じて行う体制の構築や定期的に現場の運用状況を確認することが大切です。

信頼できる委託先に依頼する

SES契約における偽装請負リスクを低減するには、信頼できるSES企業を選定することも重要です。


見極めのポイントとして、SES契約書の内容が適切に整備されていること、業務責任者が機能してエンジニアへのフォローが行き届いていること、偽装請負リスクへの理解がありクライアントにも説明できること、取引実績や評判が良いことなどが挙げられます。


契約締結前に委託先企業の体制やコンプライアンスへの取り組みを確認し、リスクの低い取引先を選ぶことが長期的に重要です。

7.まとめ

SES契約書を正しく整備することは、クライアント企業との信頼関係を築き、偽装請負などの法的リスクを回避するための第一歩です。本記事では、SES契約の基本的な定義から派遣契約・請負契約との違い、契約書に盛り込むべき項目、収入印紙の要否、偽装請負の防止策まで幅広く解説しました。


これからSES契約書を作成・見直しする方は、まず自社の取引実態を正確に整理することから始めましょう。指揮命令系統は適切に機能しているか、報酬の精算条件は明確か、現場での運用が契約内容と一致しているかなど、チェックすべきポイントを一つずつ確認することが大切です。


契約書の内容に不安がある場合は、弁護士や行政書士などの専門家にリーガルチェックを依頼することをお勧めします。IT人材の需要が高まる中、SES契約は今後も広く活用される契約形態です。

適切な契約書を整備し、法令を遵守した運用体制を構築することで、安定した取引関係と事業の成長を実現していきましょう。


本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。

SES契約書の記載項目と作成のポイント|準委任契約との関係や指揮命令系統・印紙の扱いまで解説に関するよくある質問

SES契約は、エンジニアの技術力を提供し稼働時間に応じて報酬を得る形態です。これは民法上、法律行為以外の事務を委託する「準委任契約」に該当します。成果物の完成ではなく、業務を適切に遂行すること自体が目的となる点が大きな特徴です。
最大の違いは「指揮命令権の所在」です。派遣契約では派遣先が直接指示を出せますが、SES契約では指揮命令権は常に受託企業側にあります。クライアントがSESエンジニアに直接指示を出す運用は、「偽装請負」とみなされる法的リスクがあります。
請負は「仕事の完成」に対して報酬が支払われ、受注者は成果物の納品義務や瑕疵への責任を負います。対してSESは「業務の遂行」に対して報酬が発生するため、成果物の完成義務はなく、誠実に業務を遂行していれば報酬を受け取る権利が認められます。
原則として不要です。印紙税法上、準委任契約書は課税文書の対象外である「不課税文書」とされているため、契約金額にかかわらず貼付の必要はありません。ただし、請負的性質や知的財産権の譲渡条項が含まれる場合は、課税対象となる可能性があります。
印紙が必要な文書に貼付しなかった場合、本来の印紙税額とその2倍の額の合計である「過怠税」が徴収されます。つまり税額の3倍を納める必要がありますが、調査前に自主的に申し出れば1.1倍に軽減されます。内容を精査し慎重に判断すべきです。
履行割合型とは、業務の履行の割合に応じて報酬を支払う形態です。「月160時間稼働で〇〇万円」といった時間単価制を採用するSES契約の多くがこれに該当します。2020年の改正民法により、準委任契約は報酬の支払い方で2類型に区分されました。
基本契約書で秘密保持や損害賠償など取引全体の「共通ルール」を定め、個別契約書で業務内容や報酬額など案件ごとの「具体的な条件」を定めます。この使い分けにより、継続的な取引において案件ごとに詳細な交渉を繰り返す手間を省くことが可能です。
報酬トラブルを防ぐため、稼働時間の上下限を定めます。例えば「月140〜180時間」を基準とし、下回れば減額、上回れば加算する条項を設けるのが一般的です。これにより、実際の稼働時間に基づいた客観的かつ公平な報酬算定を現場で行えます。
受託企業側に「業務責任者」を設置し、クライアントからの指示は必ずこの責任者を経由させる体制を徹底します。クライアントがエンジニアに直接指示を出したり、勤怠を管理したりする実態があると、偽装請負と判断されるリスクが高いからです。
成果物の完成義務を負わない代わりに、業務を誠実に遂行する義務のことです。SES契約の受託者は、専門家として通常期待される程度の注意を払って業務を行う必要があります。成果物責任はありませんが、この義務を怠ることは許されない点に注意です。

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この記事の監修者

SES Labo 編集部
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