SES契約と業務委託の違いとは?準委任・派遣契約との比較や指揮命令の注意点から偽装請負対策まで解説
経営・管理

SES契約と業務委託の違いとは?準委任・派遣契約との比較や指揮命令の注意点から偽装請負対策まで解説

公開日:2026/03/30最終更新日:2026/03/30
【この記事の結論】
  • SES契約は技術力を提供する準委任契約の一種で、報酬は成果物の完成ではなく労働時間に対して支払われます。
  • クライアントが直接指示を出すと偽装請負という違法状態になるため、指揮命令権は常にSES企業側が保持します。
  • 請負契約とは異なり成果物の完成責任は負いませんが、専門家として誠実に業務を遂行する善管注意義務を負います。
  • 違法状態を避けるには現場責任者を介して連絡を行い、労務管理を雇用主である自社で完結させる必要があります。
  • 収入を増やすにはクラウド等の需要が高いスキル習得や、エンジニアへの還元率が高い企業を選択することが有効です。


SES契約はIT業界で広く活用される契約形態ですが、業務委託契約との関係性や派遣契約・請負契約との境界線は複雑です。


「SES契約と業務委託契約の違いがわからない」「偽装請負のリスクを避けるにはどうすればいい」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。しかし、指揮命令系統の扱いを誤ると偽装請負に該当し、法的リスクを負う可能性があります。


本記事では、SES契約と業務委託契約の定義から両者の違い、メリット・デメリット、さらには偽装請負の判断基準や回避策までわかりやすく解説します。


契約形態を正しく理解し、適切な働き方やキャリア選択にお役立てください。


目次
  1. 1.SES契約とは
    1. SES契約の定義と特徴
    2. SESは準委任契約に該当することが多い
  2. 2.業務委託契約とは
    1. 請負契約とは
    2. 準委任契約とは
    3. 履行割合型と成果完成型の違い
  3. 3.SES契約と業務委託契約の違い
    1. SES契約と請負契約の違い
    2. SES契約と派遣契約の違い
    3. 【比較表】SES・請負・準委任・派遣の違い一覧
  4. 4.SES契約のメリット
    1. 即戦力人材を迅速に確保できる
    2. 他社エンジニアと交流する機会が多い
    3. 人的リソースを柔軟に調整できる
  5. 5.SES契約のデメリット
    1. ノウハウが社内に蓄積しにくい
    2. 教育・訓練の機会が少ない
    3. 契約終了リスクがある
  6. 6.SES契約で注意すべき偽装請負とは
    1. 偽装請負の定義
    2. 偽装請負と判断される3つの基準
    3. 偽装請負が起こる理由
  7. 7.偽装請負に関する法律と罰則
    1. 労働基準法による罰則
    2. 職業安定法による罰則
    3. 労働者派遣法による罰則
  8. 8.偽装請負を回避するための対策
    1. 契約内容を明確化する
    2. 指揮命令系統を正しく整備する
    3. SESと派遣の境界線を理解する
  9. 9.SES(業務委託)フリーランスの年収相場
    1. SESエンジニアの年収相場
    2. SESインフラエンジニアの年収相場
  10. 10.混同しやすい用語の違いを整理
    1. SEとSESの違い
    2. SIerとSES企業の違い
    3. 正社員SESとフリーランスSESの違い
  11. 11.SES案件を探すならフリーランスエージェントがおすすめ
    1. フリーランスエージェントを活用するメリット
    2. おすすめのフリーランスエージェント
  12. 12.まとめ

1.SES契約とは

この章では、SES契約の基本的な定義と特徴、なぜ準委任契約に分類されるのかを解説します。IT業界特有の契約形態を理解する第一歩として押さえておきましょう。

SES契約の定義と特徴

SES契約とは、システムエンジニアリングサービス(System Engineering Service)の略称です。エンジニアの技術力や労働力をクライアント企業に提供する契約形態で、報酬は「成果物」ではなく「労働時間(工数)」に対して支払われます。


たとえば、システム開発プロジェクトでエンジニアが1か月間稼働すると、その稼働時間に応じた報酬が発生します。成果物の完成義務を負わないため、プロジェクトが完了しなくても稼働分の対価は支払われる仕組みです。


一般的にはクライアント企業のオフィスに常駐する「客先常駐」の形態が多く見られます。ただし、常駐自体はSES契約の定義ではなく、あくまで技術提供の契約形態です。

SESは準委任契約に該当することが多い

SES契約は法的には民法第656条に規定される「準委任契約」に分類されるケースがほとんどです。準委任契約とは「法律行為ではない事務の処理を委託する契約」であり、弁護士への訴訟代理や税理士への確定申告代行といった法律行為を委託する委任契約とは区別されます。


ITエンジニアの業務は法律行為に該当しないため、SES契約では準委任契約が適用されます。準委任契約では成果物の完成責任を負わない代わりに善管注意義務(誠実に業務を遂行する義務)を負い、報酬は業務遂行に対して発生します。


また、SES契約においてエンジニアへの指揮命令権はSES企業側にあり、クライアント企業が直接業務指示を出すことは認められていません。

2.業務委託契約とは

この章では、業務委託契約の種類である請負契約と準委任契約の違い、さらに2020年民法改正で明文化された履行割合型と成果完成型について解説します。

請負契約とは

請負契約とは、「仕事の完成」を約束し、その成果物に対して報酬が支払われる契約形態です。


民法第632条 では「請負は、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約することによって、その効力を生ずる」と規定されており、成果物の納品が報酬発生の条件となります。


請負契約の主な特徴は以下のとおりです。

  • 成果物の完成義務がある

  • 納品物に瑕疵(不具合)があると修正責任を負う

  • 作業時間に関係なく、成果物に対して報酬が発生する

  • 受注者側に作業方法の裁量がある

システム開発では、Webサイト制作やアプリ開発など明確な納品物が定義できる案件で採用されることが多いです。ただし、完成責任を負うため、工期遅延や品質問題が発生した場合は受注者側のリスクとなります。

準委任契約とは

準委任契約とは、特定の業務を遂行することを目的とし、成果物の完成義務を負わない契約形態です。受託者は「善良な管理者の注意をもって業務を遂行する義務(善管注意義務)」を負い、専門家として通常求められる注意を払って業務を行います。

成果物の完成は約束しないものの、誠実に業務を遂行する責任があります。

準委任契約がよく活用される業務は以下のとおりです。

  • システムの保守・運用業務

  • 技術コンサルティング

  • テスト工程の支援

  • インフラ環境の監視・管理

SES契約は、この準委任契約の形態でエンジニアの技術力を提供するサービスです。そのため、成果物に対する責任ではなく、稼働時間や工数に応じて報酬が発生する仕組みとなっています。

履行割合型と成果完成型の違い

2020年4月施行の改正民法により、準委任契約には「履行割合型」と「成果完成型」の2種類があることが明文化されました。


履行割合型は業務の遂行に対して報酬が発生する従来型の準委任契約で、エンジニアが稼働した時間や工数に応じて報酬が支払われ、SES契約の多くはこの型に該当します。


一方、成果完成型は成果物の完成を条件に報酬が発生する準委任契約で、民法第648条の2において「委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合」と規定されています。

なお、成果物に対する瑕疵担保責任は負わない点で請負契約とは異なります。両者の違いを整理すると以下のようになります。


履行割合型と成果完成型の比較

項目

履行割合型

成果完成型

報酬発生条件

業務遂行に対して

成果完成に対して

成果物の責任

なし

なし(請負と異なる点)

主な適用場面

保守運用、技術支援

コンサルティング成果報告

SES契約での採用

多い

少ない

3.SES契約と業務委託契約の違い

この章では、SES契約と請負契約、派遣契約の違いを明確にし、それぞれの契約形態を一覧表で比較します。適切な契約形態を選択するための判断基準を押さえましょう。

SES契約と請負契約の違い

SES契約と請負契約の最大の違いは、「成果物に対する責任の有無」です。SES契約(準委任契約)では、エンジニアは稼働時間に応じた報酬を受け取り、成果物の完成義務を負いません。

たとえば、システム開発プロジェクトで契約期間内に成果物が完成しなくても、稼働した分の報酬は支払われます。一方、請負契約では成果物の納品が報酬発生の条件となり、納品が完了するまで報酬を請求できません。

また、納品物に不具合があると、契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)として修正対応を求められます。


報酬体系にも違いがあり、SES契約では「人月単価」(1人が1か月稼働した場合の報酬)で契約することが一般的ですが、請負契約では「プロジェクト単価」や「機能単位の単価」で契約するケースが多いです。

SES契約と派遣契約の違い

SES契約と派遣契約の決定的な違いは、「指揮命令権の所在」です。


SES契約では、エンジニアへの指揮命令権はSES企業(ベンダー)側にあり、クライアント企業がエンジニアに直接業務指示を出すことはできず、SES企業の責任者を通じて指示を伝えます。


一方、派遣契約では指揮命令権は派遣先企業(クライアント)にあり、派遣社員は派遣先の上司から直接業務指示を受けて働きます。この違いは労働者保護の観点から重要です。


派遣契約の場合、派遣元企業は厚生労働大臣の許可(派遣業許可)を取得する必要があり、派遣労働者に対する様々な保護規定が適用されます。

SES契約の形をとりながら実態として派遣契約と同様の働き方をさせている場合、「偽装請負」として違法となるリスクがあります。なお、派遣契約には原則3年という派遣可能期間の制限がありますが、SES契約にはこの制限がなく、これがSES契約が広く活用される理由の一つです。

【比較表】SES・請負・準委任・派遣の違い一覧

各契約形態の特徴を比較表にまとめました。

契約締結時や働き方の検討時に参考にしてください。

項目

SES契約

請負契約

準委任契約

派遣契約

契約の分類

業務委託

業務委託

業務委託

労働者派遣

報酬の対象

労働時間(工数)

成果物

業務遂行

労働時間

成果物責任

なし

あり

なし

なし

指揮命令権

SES企業

受託者

受託者

派遣先企業

瑕疵担保責任

なし

あり

なし

なし

期間制限

なし

なし

なし

原則3年

必要な許可

不要

不要

不要

派遣業許可

この比較表のとおり、SES契約は準委任契約の一形態であり、業務委託契約に含まれます。派遣契約とは法的に全く異なる契約類型であるため、混同しないよう注意が必要です。

4.SES契約のメリット

この章では、企業がSES契約を活用するメリットと、エンジニアがSESで働くメリットの両面から解説します。人材確保やキャリア形成の観点から、SES契約の利点を確認しましょう。

即戦力人材を迅速に確保できる

SES契約の最大のメリットは、正社員採用では数か月以上かかる人材確保を、SES企業が保有するエンジニアの中から案件に適した人材を紹介してもらうことで最短数週間に短縮できる点です。


急なプロジェクト立ち上げや特定技術の専門家が必要な場面、繁忙期の一時的な人員増強などで特に有効であり、採用に伴う人件費の固定費化を避けられるためプロジェクト単位での予算管理もしやすくなります。

他社エンジニアと交流する機会が多い

SES契約で働くエンジニアは、客先常駐という働き方の特性上、クライアント企業の社員や他のSES企業から参画しているエンジニアと日常的に接するため、技術的な知見の共有やキャリア形成に役立つ人脈を築きやすい環境にあります。


異なる技術スタックや開発手法を学べるほか、業界の最新動向をキャッチアップでき、転職や案件紹介の機会が広がることも少なくありません。

人的リソースを柔軟に調整できる

システム開発プロジェクトでは要件定義・開発・保守運用とフェーズごとに必要な人員数が大きく変動しますが、SES契約を活用すると正社員だけでは対応しにくい増減にも柔軟に対応できます。


契約期間の設定による計画的なリソース管理や、専門性の高い人材を必要な期間だけ確保できる点も利点ですが、エンジニア側から見るとこの柔軟性は「契約終了リスク」という形で表れることもあります。

5.SES契約のデメリット

この章では、SES契約を活用する際のデメリットと注意点を解説します。メリットと合わせて理解することで、適切な契約形態の選択に役立てましょう。

ノウハウが社内に蓄積しにくい

SES契約を多用した場合、SESエンジニアは契約期間終了後に次の案件へ移動するため、プロジェクトで培われた知見や経験が社外に流出し、社内に蓄積されにくくなります。


特にシステムの設計思想や運用上のノウハウなど文書化されにくい「暗黙知」は人材とともに失われがちであり、対策としてはSESエンジニアと自社社員を組み合わせたチーム編成やナレッジ共有の仕組みづくりが重要です。

教育・訓練の機会が少ない

SES契約で働くエンジニアは、契約期間が限定されているためクライアント企業から研修投資を受けにくく、SES企業側も常駐中は教育機会を提供しにくい状況にあり、スキルアップは個人の努力次第になりやすいです。


対策としては、SES企業選びの際に研修制度や資格取得支援制度の充実度を確認するほか、オンライン学習や技術コミュニティを活用した自己学習が有効です。

契約終了リスクがある

SES契約は通常3か月から6か月単位で更新され、プロジェクト終了や予算削減、クライアント企業の方針変更により契約が更新されないケースがあるため、正社員のような雇用の安定性は期待しにくい働き方です。


次の案件がすぐに決まらない場合は「待機期間」が発生し、多くのSES企業では法定水準(平均賃金の60%以上)の支給にとどまるため、複数の技術スキル習得や案件獲得力のあるSES企業選びなど事前の対策が重要です。

6.SES契約で注意すべき偽装請負とは

この章では、SES契約において最も注意が必要な「偽装請負」の定義と判断基準、発生原因について解説します。法的リスクを回避するために必ず押さえておきましょう。

偽装請負の定義

偽装請負とは、契約上は請負契約や準委任契約(SES契約含む)の形式をとりながら、実態は労働者派遣と同様の働き方をさせている状態を指します。


労働者派遣を行う場合、派遣元企業は厚生労働大臣から派遣事業の許可を取得し、労働者派遣法に基づく様々な規制を遵守する必要があり、偽装請負はこうした法規制を免れるために行われる違法行為で労働基準法、職業安定法、労働者派遣法に違反します。


偽装請負が問題となる最大の理由は、労働者の権利が十分に保護されない点です。
派遣労働者として働いていると受けられるはずの保護(派遣期間の制限、同一労働同一賃金、雇用安定措置など)が適用されず、不安定な立場に置かれてしまいます。


また、偽装請負の状態では業務上の事故やトラブルが発生した際に責任の所在が曖昧になりやすく、労働者にとって不利益が生じるリスクがあります。

偽装請負と判断される3つの基準

偽装請負かどうかの判断基準は、厚生労働省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示)で示されており、主に以下の3つの観点から判断されます。

  • 指揮命令権の所在

    SES契約や請負契約では、労働者への指揮命令権は受託者側(SES企業)にある必要があります。クライアント企業が直接エンジニアに対して業務の進め方や段取り、労働時間の管理などを指示している場合、偽装請負と判断されるリスクが高まります。

  • 労務管理の独立性

    受託者は労働者の始業・終業時刻の管理、休憩時間の付与、残業の指示などの労務管理を自ら行う必要があります。クライアント企業が出退勤の管理や残業の指示を行っている場合は問題となります。

  • 業務遂行の独立性

    受託者は業務に必要な資金や機材を自ら調達し、専門的な技術や経験に基づいて業務を処理する必要があります。

クライアント企業から機材が支給されていたり、クライアント企業の社員と同一の業務を単に分担しているだけの場合は、偽装請負と判断される可能性があります。

偽装請負が起こる理由

偽装請負が発生する理由は「意図的なもの」と「認識不足によるもの」の2つに分類できます。意図的な偽装請負は、派遣元への許可義務や同一労働同一賃金といった法規制やコストを回避する目的で行われます。


一方、認識不足による偽装請負は、SES契約と派遣契約の違いを理解せず担当者が悪意なく直接指示を出してしまうケースです。特にIT業界では客先常駐が一般的なため、契約上の境界線が曖昧になりやすい傾向があります。

7.偽装請負に関する法律と罰則

この章では、偽装請負が違反となる法律と、それぞれの罰則内容を解説します。企業・エンジニア双方にとって重大なリスクとなるため、確実に理解しておきましょう。

労働基準法による罰則

偽装請負が労働基準法に違反する場合、「中間搾取の禁止」規定(労働基準法第6条)に抵触する可能性があります。


労働基準法第6条では「何人も、法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない」と規定されており、偽装請負において受託者(SES企業)がクライアント企業から受け取った報酬からマージンを差し引いてエンジニアに支払う構造は、中間搾取と判断される可能性があります。


この規定に違反した場合の罰則は以下のとおりです。

  • 1年以下の懲役または50万円以下の罰金(労働基準法第118条)

  • クライアント企業も搾取を幇助したとして同条違反となる可能性あり

特に「一人請負型」と呼ばれる、雇用関係のない個人をあたかも労働者のように働かせるケースでは、中間搾取の問題が顕著に現れます。

職業安定法による罰則

偽装請負が「労働者供給事業」に該当すると判断された場合、職業安定法第44条および第45条に違反します。


職業安定法第44条では、労働組合が無償で行う場合など限られた例外を除き労働者供給事業を禁止しており、労働者供給とは「供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させること」を指し、偽装請負の実態がこれに該当する場合があります。


職業安定法違反の罰則は以下のとおりです。

  • 1年以下の懲役または100万円以下の罰金(職業安定法第64条第9号)

  • 供給元(SES企業)と供給先(クライアント企業)の双方が処罰対象

  • 法人の場合、法人自体にも100万円以下の罰金(職業安定法第67条)

さらに、厚生労働大臣による指導・助言(職業安定法第48条の2)や改善命令(職業安定法第48条の3)の対象となり、勧告に従わない場合は企業名が公表される可能性もあります。

労働者派遣法による罰則

偽装請負が無許可での労働者派遣事業に該当すると判断された場合、労働者派遣法に違反します。


労働者派遣法第5条第1項では労働者派遣事業を行うには厚生労働大臣の許可が必要と規定しており、許可を得ずに実質的な労働者派遣を行っているSES企業と、そのような違法派遣を受け入れているクライアント企業の双方が処罰対象となります。


労働者派遣法違反の罰則は以下のとおりです。

  • 無許可派遣:1年以下の懲役または100万円以下の罰金(労働者派遣法第59条第2号)

  • 無許可事業者からの派遣受入:行政指導、改善命令、勧告、企業名公表の対象

  • 法人の場合、法人自体にも100万円以下の罰金(労働者派遣法第62条)

また、2015年10月から施行された「労働契約申込みみなし制度」(労働者派遣法第40条の6 )により、違法派遣であることを知りながら労働者を受け入れていた場合、クライアント企業は当該労働者に対して直接雇用の申込みをしたものとみなされます。


労働者がこの申込みを承諾すると、クライアント企業との間で直接の雇用関係が成立します。

8.偽装請負を回避するための対策

この章では、SES契約において偽装請負を回避するための具体的な対策を解説します。クライアント企業・SES企業・エンジニアそれぞれの立場で実践できる内容を確認しましょう。

契約内容を明確化する

偽装請負を回避するためにまず重要なのは、契約書に業務内容や指揮命令系統を明確に記載することです。


契約締結時に確認・明記すべき項目として、以下が挙げられます。

  • 委託する業務の具体的な内容と範囲

  • 指揮命令権がSES企業にあることの明記

  • 業務の進め方や段取りに関するSES企業の裁量

  • 業務で使用する機材や設備の調達責任

  • 労働時間や休憩に関する管理責任の所在

  • 報告体制と連絡経路の明確化

契約書に「指揮命令権はSES企業にある」と記載されていても、実態が伴っていなければ意味がありません。そのため、契約内容と実際の業務運用が一致しているかを定期的に確認する仕組みも重要です。

また、契約開始前にクライアント企業とSES企業の双方で偽装請負に関する認識を共有し、問題となりうる行為の具体例を確認しておくことも有効です。

指揮命令系統を正しく整備する

SES契約において最も重要なのは、指揮命令系統を正しく運用することです。


クライアント企業の担当者がSESエンジニアに対して直接業務指示を出すことは偽装請負の典型的なパターンであり、これを防ぐためには以下のような運用ルールを整備する必要があります。

  • SES企業側に現場責任者を配置し、クライアントからの要請は責任者を通じて伝達する

  • 業務の進め方や段取りの決定はSES企業側で行う

  • SESエンジニアの労働時間管理(出退勤、残業指示など)はSES企業が行う

  • 業務上の評価や人事的な判断はSES企業が行う

  • 問題発生時の対応もSES企業の責任者が判断する

現場では「効率を考えると直接指示を出したい」という場面も出てきますが、便宜的な運用が偽装請負のリスクを高めることを理解し、契約に沿った運用を徹底することが重要です。

SESと派遣の境界線を理解する

偽装請負を回避するためには、SES契約(準委任契約)と派遣契約の境界線を正しく理解することが不可欠です。

両者の境界線を判断する主なポイントを整理すると、以下のようになります。


SES契約と派遣契約の境界線チェックリスト

チェック項目

適正なSES契約

偽装請負の疑い

業務指示は誰が出しているか

SES企業

クライアント企業

出退勤の管理は誰が行っているか

SES企業

クライアント企業

残業の指示は誰が出しているか

SES企業

クライアント企業

業務で使用する機材の調達

SES企業

クライアント企業

エンジニアの評価は誰が行うか

SES企業

クライアント企業

作業場所・席の指定

協議の上決定

クライアント企業が一方的に指定

服務規律(服装など)の指示

SES企業

クライアント企業

上記のチェックリストで「偽装請負の疑い」に該当する項目が複数ある場合は、現場の運用を見直す必要があります。判断に迷う場合は、弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談してみましょう。

9.SES(業務委託)フリーランスの年収相場

この章では、SES契約で働くエンジニアの年収相場を職種別に解説します。キャリア選択や報酬交渉の参考にしてください。

SESエンジニアの年収相場

SESエンジニアの平均年収は約350万円〜500万円程度とされており、経験年数やスキル、担当する工程によって大きく変動します。


年代別の年収相場は以下のとおりです。

年代

年収相場

特徴

20代

300万〜400万円

基礎スキル習得期、下流工程中心

30代

400万〜550万円

即戦力として評価、リーダー経験者は上昇

40代

500万〜670万円

マネジメントスキルや専門性で差が開く

50代

500万〜700万円以上

管理職経験やコンサル能力で市場価値が決まる

SESエンジニアの年収は、クライアント企業がSES企業に支払う「人月単価」からSES企業のマージン(一般的に20〜40%程度)を差し引いた金額が基本となるため、「還元率」の高いSES企業を選ぶことが年収アップのポイントです。


また、プログラミングだけでなく、クラウド(AWS、Azureなど)やセキュリティ、AI・機械学習といった需要の高いスキルを習得すると、より高単価の案件を獲得できる可能性が高まります。

SESインフラエンジニアの年収相場

SESインフラエンジニアの年収相場は、一般的なSESエンジニアと比較してやや高めの傾向にあります。


インフラエンジニアの年収相場は以下のとおりです。

  • 運用・監視中心:350万〜450万円

  • 構築経験あり:450万〜600万円

  • 設計経験あり:550万〜700万円

  • クラウド(AWS、Azure)スキル保有:600万〜800万円以上

インフラエンジニアの需要は高く、特にクラウド環境の設計・構築ができるエンジニアは市場価値が高まっています。経済産業省の調査によると、IT人材は2030年には最大79万人不足すると予測されており、インフラ領域も例外ではありません。

年収アップを目指すためのポイントとして、以下が挙げられます。

  • AWS認定資格やAzure認定資格などのクラウド資格を取得する

  • Infrastructure as Code(Terraform、Ansibleなど)のスキルを習得する

  • セキュリティ領域の知識を深める

  • 上流工程(設計・要件定義)の経験を積む

10.混同しやすい用語の違いを整理

この章では、SESと混同されやすい用語の違いを整理します。正確な理解は、キャリア選択や契約判断において重要です。

SEとSESの違い

SE(システムエンジニア)は要件定義から運用までシステム開発に関わるエンジニアの「職種名」であり、SES(システムエンジニアリングサービス)はエンジニアの技術力を準委任契約で提供する「契約形態」を指します。


SEはSES企業で働く場合もあれば、自社開発企業やSIerで働く場合もあり、SES企業所属のSEは「SESエンジニア」と呼ばれることがあります。


つまり、SEという職種の人がどのような契約形態で働くかは別の問題であり、両者は職種と契約形態という異なる概念です。

SIerとSES企業の違い

SIer(システムインテグレーター)は、クライアント企業からシステム開発を請け負い、要件定義から運用・保守まで一貫して担当する企業です。


請負契約で成果物を納品するため完成責任を負い、NTTデータ、富士通、日立製作所、NECなどが代表例です。これに対し、SES企業は準委任契約でエンジニアの技術力を提供し、稼働時間に応じた報酬を受け取るビジネスモデルで、成果物の完成責任は負いません。


両者の違いを整理すると以下のようになります。

項目

SIer

SES企業

主な契約形態

請負契約

準委任契約

提供するもの

システム(成果物)

エンジニアの技術力

成果物責任

あり

なし

報酬の対象

納品物

労働時間(工数)

担当工程

上流〜下流まで全般

主に中流〜下流

年収水準

比較的高い

SIerより低い傾向

大規模プロジェクトでは、SIerがプロジェクト全体を管理し、不足する人員をSES企業から調達する構造が一般的です。

正社員SESとフリーランスSESの違い

正社員SESは、SES企業に雇用されてクライアント企業で働く形態で、社会保険や福利厚生が適用され収入の安定性があります。ただし、年収はSES企業の還元率に依存するため、同等のスキルを持つフリーランスと比較すると低くなる傾向があります。

フリーランスSESは、個人事業主としてクライアント企業やエージェントと直接契約を結ぶ形態です。中間マージンが少ない分、高い報酬を得られる可能性がありますが、社会保険は自己負担となり、案件が途切れた際の収入保障はありません。

両者の違いを整理すると以下のようになります。

項目

正社員SES

フリーランスSES

雇用形態

SES企業との雇用契約

業務委託契約(個人事業主)

社会保険

企業が負担

自己負担

年収水準

相場通り

高い可能性あり

収入の安定性

高い

低い(案件依存)

案件選択の自由度

限定的

高い

確定申告

不要(年末調整)

必要

キャリアのフェーズや個人の状況に応じて、どちらの働き方が適しているかを検討することが重要です。

11.SES案件を探すならフリーランスエージェントがおすすめ

この章では、フリーランスとしてSES案件を探す際に活用したいフリーランスエージェントのメリットとおすすめサービスを紹介します。

フリーランスエージェントを活用するメリット

フリーランスとしてSES案件を探す場合、フリーランスエージェントを活用すると効率的に案件を見つけられます。


主なメリットは以下のとおりです。

  • 非公開案件を含む豊富な案件情報にアクセスできる

  • 自分のスキルや希望条件に合った案件を紹介してもらえる

  • 単価交渉を代行してもらえる

  • 契約書のチェックや手続きをサポートしてもらえる

  • 案件終了前に次の案件を紹介してもらえるため収入の途切れを防げる

  • 確定申告や福利厚生のサポートを受けられるサービスもある

フリーランス経験が浅い方や営業活動に時間を割きたくない方にとって、エージェントのサポートは大きなメリットとなります。


エージェントによって得意な技術領域や案件の質が異なるため、「フリーランスボード 」などを活用して複数のエージェントに登録して比較検討しましょう。

おすすめのフリーランスエージェント

フリーランスエンジニアがSES案件を探す際におすすめのエージェントを紹介します。

複数のエージェントに登録すると、案件の選択肢が広がります。

  • レバテックフリーランス

    業界最大級の案件数を誇り、高単価案件も豊富です。専任のコーディネーターによるサポートが手厚く、福利厚生サービスも充実しています。

  • Tech Stock(テックストック)

    20年以上の実績があるフリーランス案件紹介サービスです。月単価80万円を超える高単価案件も多数保有しており、スキルアップや税務関連のサポートも提供しています。

  • Midworks(ミッドワークス)

    正社員並みの保障が特徴です。給与保障制度や各種保険のサポートがあり、フリーランスの不安定さを軽減したい方に向いています。

  • PE-BANK(ピーイーバンク)

    老舗のフリーランスエージェントです。地方案件も豊富で、マージン率が明確に開示されている点が特徴です。

上記フリーランスエージェントの詳細や案件を確認してみる→

12.まとめ

SES契約は業務委託契約(準委任契約)の一種であり、派遣契約とは指揮命令権の所在が異なります。この違いを正しく理解することで、契約トラブルや偽装請負のリスクを避けられます。

企業にとっては即戦力の確保と柔軟な人員調整が、エンジニアにとっては多様なプロジェクト経験の獲得がSES契約の主なメリットです。年収アップを目指す場合は、クラウドやセキュリティなど需要の高いスキルを習得し、上流工程の経験を積むことが有効です。


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IT人材の需要が高まる中、SES契約はエンジニアにとって多様なキャリアを築くための選択肢の一つです。契約形態の違いを正しく理解した上で、自身のキャリアプランに合った働き方を選んでいきましょう。


本記事が皆様にとって少しでもお役に立てますと幸いです。

SES契約と業務委託の違いとは?準委任・派遣契約との比較や指揮命令の注意点から偽装請負対策まで解説に関するよくある質問

最大の違いは「成果物に対する完成責任の有無」です。SES契約は準委任契約の一種であり、報酬は成果物ではなく労働時間に対して支払われます。一方、請負契約は仕事の完成を約束し、納品が完了して初めて報酬を請求できるという特徴があります。
指揮命令権は、エンジニアを雇用しているSES企業側にあります。クライアントが直接指示を出すことは認められず、SES企業の責任者を通じて伝えます。これが派遣契約との違いであり、違反すると偽装請負とみなされるリスクがあります。
主な判断基準は「指揮命令権の所在」「労務管理の独立性」「業務遂行の独立性」の3つです。クライアントが直接指示を出したり、残業の指示を行ったりしている場合、実態が労働者派遣であるとみなされ、偽装請負として違法行為に該当する恐れがあります。
労働基準法や職業安定法、派遣法に基づき、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。対象は供給元のSES企業だけでなく、受け入れ側のクライアント企業も処罰の対象となり、企業名が公表されることもあります。
業務の遂行に対して報酬が発生する形態で、SES契約の多くがこれに該当します。エンジニアが実際に稼働した時間や工数に応じて報酬が計算されるため、成果物の完成を条件とせず、誠実に業務を遂行する「善管注意義務」を負うことが主な特徴です。
即戦力となる人材を迅速に確保できる点です。正社員採用には時間がかかりますが、SESなら案件に適した人材を最短数週間で見つけられます。また、プロジェクトのフェーズに合わせた柔軟な人員調整が可能で、人件費の固定費化を避けられる利点もあります。
設計思想などのノウハウが自社に蓄積しにくい点や、教育機会が個人の努力に依存しやすい点が挙げられます。また、プロジェクト終了に伴う契約終了リスクもあり、次の案件が決まらない待機期間中は、給与が法定水準の6割程度まで下がる可能性があります。
クラウドやセキュリティ、AIといった需要の高い技術を習得し、上流工程の経験を積むことが有効です。また、エンジニアへの還元率が高い企業を選ぶことや、専門性を高めてより高単価の案件を獲得すること、他社エンジニアとの人脈を築くことも重要です。
「SE」はシステム開発に関わるエンジニアという「職種名」を指すのに対し、「SES」はエンジニアの技術力を準委任契約で提供する「契約形態」を指します。SEという職種の人が、SESという契約形態で客先常駐として働くケースが一般的です。
正社員はSES企業と雇用関係があり、社会保険や収入の安定性がありますが、年収は企業の還元率に依存します。一方、フリーランスは個人事業主として契約し、高報酬を狙える反面、社会保険は自己負担で、案件が途切れると収入が途絶えるリスクがあります。

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この記事の監修者

SES Labo 編集部
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